こんにちは。The Motorcycle Insight 運営者の「ゆうき」です。
Z900RSのオーナーさんにとって、エンジンオイル交換は愛車のコンディションを保つために欠かせないメンテナンスですよね。ですが、いざ自分でやろうとすると、「Z900RSのオイル交換、頻度ってどれくらいがベストなの?」「走行距離は?」「必要なオイルの量って、フィルター交換するときとしないときで違うんだっけ?」といった疑問が出てくるかなと思います。また、自分でやる(DIY)場合の手順や、ちょっと怖い「エア抜き」なんて言葉も気になりますよね。
この記事では、Z900RSのオイル交換について、気になる時期や頻度、正確なオイル量、そして自分で交換する際の具体的なやり方や必要な工具まで、しっかり解説していきますよ。
この記事のポイント
- Z900RSに最適なオイル交換の時期と頻度
- フィルター交換「あり/なし」別の正確なオイル量
- 自分でオイル交換(DIY)する具体的な手順と工具
- 注意すべきドレンボルトのトルクやエア抜きの知識
Z900RSオイル交換の基礎知識

まずは、Z900RSのオイル交換に関する基本的な情報を押さえておきましょう。メーカー推奨の基準から、おすすめのオイルまで、知っておきたいポイントをまとめました。
交換時期と推奨される頻度

Z900RSのオーナーズマニュアルやサービスマニュアルを見ると、オイル交換の推奨時期は「走行6,000kmまたは1年ごと」と指定されています。これは、昔のバイク(例えば3,000kmごとが当たり前だった時代)と比べると、かなり長いサイクルになっていますよね。
この背景には、もちろんエンジン自体の加工精度が上がったことや、エンジンオイルそのものの性能(耐久性や清浄性)が昔に比べて格段に向上していることがあります。だから、メーカーとして「このサイクルでも問題ないですよ」と保証しているわけです。
ただ、これはあくまで「標準的な使用状況」での話。正直なところ、バイクを大事に、長く良いコンディションで乗り続けたいなら、もう少し早めの交換をおすすめしたいのが私の本音です。
なぜ早めの交換が推奨されるのか?
理由は、多くのライダーの乗り方が、メーカーの想定する「標準的な使用状況」よりも、エンジンにとって過酷な「シビアコンディション」に該当しやすいからです。
シビアコンディションとは、具体的には以下のような乗り方です。
エンジンにとって過酷な「シビアコンディション」の例
- 走行距離の大半が「短距離走行(チョイ乗り)」。(エンジンが温まりきる前に停止する)
- 渋滞路や未舗装路の走行が多い。
- 発進・停止を頻繁に繰り返す(ストップ&ゴーが多い街乗り)。
- 高回転を多用するスポーティーな走行が多い。
特に「短距離走行」は要注意です。エンジンが十分に温まらないと、エンジン内部で発生した水分(燃焼ガスに含まれる)が蒸発しきれず、オイルと混ざって「乳化」してしまいます。オイルが白っぽく濁るアレですね。こうなると、オイル本来の潤滑性能はガクッと落ちてしまいます。
また、ストップ&ゴーが多い街乗りは、ギアチェンジの回数も増え、オイルのせん断(分子構造が破壊されること)が進みやすく、熱的にも厳しい状況です。
日本の気候、特に夏場の高温多湿や、都市部の渋滞を考えると、知らず知らずのうちにエンジンに負担をかけていることが多いんですよね。だからこそ、メーカー指定の6,000kmを待たずに、早めに交換してあげるのが愛車への優しさかなと思います。
走行距離と交換頻度の目安

では、具体的にどれくらいのサイクルで交換するのが理想的なんでしょうか。これはライダーの乗り方によって最適解が変わってくるので、パターン別に解説しますね。
私の周りのZ900RSオーナーや、これまでの経験則から言うと、以下のような目安が現実的で、かつ安心かなと思います。
Z900RS オイル交換頻度のおすすめ目安
- パターン1: 通常走行(週末のツーリングがメイン)
→ 3,000km〜5,000km、または半年に1回 - パターン2: シビアコンディション(街乗り・短距離メイン)
→ 3,000kmごと(または半年に1回) - パターン3: あまり乗らない(年間3,000km未満)
→ 走行距離に関わらず、最低でも1年に1回
パターン1: ツーリングメインの場合
週末に高速道路やワインディングを使って、ある程度の距離を走る乗り方ですね。これはエンジンにとっては比較的良いコンディションです。一度エンジンが温まれば、一定の回転数で巡航することが多いですからね。ただ、高速走行が多いと、やはりエンジンは高温にさらされます。オイルの熱による酸化も進むので、メーカー指定の6,000kmよりは少し早め、5,000kmあたりで交換してあげると、良いコンディションをキープしやすいですよ。
パターン2: 街乗り・短距離メインの場合
これが先ほど話した「シビアコンディション」の典型です。エンジンが温まる前に目的地に着いてしまう「チョイ乗り」は、エンジン内部の結露を招き、オイルの乳化リスクが一番高いです。また、ストップ&ゴーの繰り返しは、オイルの温度上昇とせん断を促進します。
この乗り方がメインの方は、走行距離が短くてもオイルの劣化は早く進んでいます。3,000kmごと、もしくは距離が伸びなくても半年に1回は交換するのが断然おすすめです。
パターン3: あまり乗らない場合
「大事にしすぎて、年間1,000kmも走らないかも…」という方もいますよね。ここ、落とし穴です。「走ってないからオイルは汚れてない」と思いがちですが、エンジンオイルは空気に触れているだけでも酸化(劣化)が進みます。
長期間動かさないと、エンジン内部で結露した水分がオイルパンの底に溜まり、そこからサビが発生するリスクもあります。走行距離に関わらず、最低でも1年に1回は新しいオイルに交換して、エンジン内部をリフレッシュさせてあげましょう。
オイル交換にかかる費用

オイル交換の費用は、「お店に任せるか」「自分でやるか」で大きく変わってきます。それぞれのメリット・デメリットを見てみましょう。
カワサキプラザやバイクショップに依頼する場合
一番安心で楽な方法ですよね。すべてプロにお任せできます。
- メリット:
- プロによる確実な作業:トルク管理やエア噛みなどの心配が一切不要です。
- 安心感:カワサキプラザなら、Z900RSのウィークポイントも熟知しています。
- 同時点検:オイル交換のついでに、タイヤの空気圧やチェーンの張り、灯火類など、基本的な「軽点検」を一緒にやってくれるお店がほとんどです。これは大きなメリット!
- 診断機:プラザなら専用の診断機で、ECUエラーなどもチェックしてもらえる場合があります。
- デメリット:
- 費用:当然ですが、工賃がかかります。
インプットした情報によると、あるカワサキプラザでのオイル交換(オイルのみ、フィルター交換なし)の費用例として、合計で約8,000円〜というものがありました。内訳は「オイル代(S4を3.3Lで約5,500円)+工賃(約2,600円)」といった具合です。もちろん、選ぶオイル(例えば「冴速」や「冴強」)や、フィルター交換が加われば、料金はこれより上がります。
「カワサキケアモデル」や別途「メンテナンスパック」に加入している場合は、オイル交換が無料(または割引)で付帯していることもあるので、ご自身の契約を確認してみてくださいね。
自分でDIYする場合
コストを抑えたい、自分でいじるのが好き、という方はDIYですよね。
- メリット:
- 費用が安い:かかるのは「オイル代」と「消耗品代(フィルター、ワッシャー、廃油処理箱)」のみ。オイルにこだわっても、お店より安く仕上がることが多いです。
- 愛着・知識が深まる:自分で手を入れると、バイクの構造もわかりますし、何より愛着が湧きますよね。
- 好きなオイルを選べる:お店に置いてないマニアックなオイルも自由に試せます。
- デメリット:
- 工具の初期投資:トルクレンチやソケットレンチ、オイルジョッキなど、最初に一通り揃える必要があります。
- 手間と場所:作業する場所の確保と、廃油の処理(自治体のルールに従う)が必要です。
- リスク:全ての作業が「自己責任」です。ドレンボルトの締めすぎによるネジ山破損や、次項で解説する「エア噛み」など、最悪の場合エンジンを壊すリスクも伴います。
DIYは魅力も多いですが、特にトルク管理だけは本当にシビアです。自信がないうちは、お店でプロの作業を見せてもらうのも勉強になりますよ。
おすすめのエンジンオイル

Z900RSのオイル選び、悩みますよね。市場には星の数ほどオイルがありますが、迷ったらやっぱりカワサキ純正オイルが一番安心です。
なぜなら、メーカーがエンジン開発の段階で、そのオイルを使ってテストを繰り返しているから。エンジンの性能を100%引き出し、保護する上で、最も相性が良いのは当然ですよね。
カワサキ純正オイルには、主に4つのラインナップがあります。
カワサキ純正オイルのラインナップ
- 冴強 (SAE: 10W-50) [全化学合成油] カワサキオイルの最上位グレードです。10W-50という硬めの粘度が特徴で、高温時や高負荷時の油膜保持性能に優れています。真夏の渋滞やサーキット走行など、エンジンにとって非常に過酷な状況でもタレにくく、エンジンを強力に保護します。インプット情報でも「メカノイズが大幅に低減した」「熱ダレがない」といったレビューがありますね。ライムグリーンの色が特徴的です。
- 冴速 (SAE: 10W-40) [全化学合成油] 冴強と同じくエルフとの共同開発で生まれた全化学合成油。Z900RSの指定粘度である10W-40に合致しています。低フリクション(抵抗の少なさ)と高耐久性を両立しているのがウリで、エンジンのレスポンス向上や、シフトタッチがカチッと入るようになると評判です。「シフトがスコスコ入る」「振動が減った」というレビューも多く、Z900RSオーナーにはこの「冴速」が一番人気かもしれませんね。こちらもライムグリーンです。
- R4 (SAE: 10W-40) [部分化学合成油] 性能とコストのバランスに優れた、カワサキの定番オイルです。部分化学合成油ですが、高回転時のせん断安定性や高い洗浄性を持っており、純正指定オイルとして多くの車種で使われています。街乗りからツーリングまで、そつなくこなす優等生オイルですね。
- S4 (SAE: 10W-40) [部分化学合成油] 最もリーズナブルなスタンダードオイルです。API規格はSGと少し古めですが、バイク用オイルに必要な性能はきっちり満たしています。メーカー推奨サイクル(6,000km)より早め(3,000kmとか)にしっかり交換する乗り方なら、このS4でも十分コンディションを維持できますよ。
Z900RSオーナーには「冴速」が人気!
Z900RSの性能をしっかり引き出しつつ、フィーリングの向上(特にシフトタッチ)も楽しみたい、という方には「冴速 (10W-40)」が一番バランスが取れていておすすめです。夏場のサーキット走行など、より過酷な状況を走るなら「冴強 (10W-50)」もアリですね。
もちろん、MOTUL(モチュール)やWAKO'S(ワコーズ)など、高品質な社外オイルもたくさんあります。選ぶ際は、Z900RSの指定(10W-40)を基本に、クラッチが滑らないための「JASO MA」または「MA2」規格の認証を受けているオイルを選ぶようにしてくださいね。
オイルフィルター交換の必要性

エンジンオイルは「エンジンの血液」と例えられますが、オイルフィルターはさながら「腎臓」の役割です。
エンジン内部では、金属部品同士が擦れ合うことで微細な金属粉(鉄粉)が発生しますし、燃焼によってカーボンやスラッジ(汚れの塊)も発生します。オイルフィルターは、これらの不純物をオイルが循環する過程で「ろ過」し、クリーンなオイルだけをエンジン各部に送り届ける、非常に重要なパーツなんです。
このフィルターが不純物で詰まってしまうとどうなるか?
フィルターが完全に詰まると、オイルが流れなくなりエンジンが焼き付いてしまう…のを防ぐために、フィルター内部には「リリーフバルブ(バイパスバルブ)」という安全装置が備わっています。フィルターが詰まって油圧が異常に高くなると、このバルブが開いて、ろ過されていない、不純物が混じったままのオイルをエンジン各部に循環させてしまうんです。
これではエンジン内部が傷だらけになってしまいますよね。そうなる前に、フィルターは定期的に交換する必要があるわけです。
交換頻度は? 2回に1回 vs 3回に1回
カワサキのメーカー推奨は「オイル交換3回につき1回」となっています。これは、6,000kmサイクルでオイル交換する場合、18,000kmごとにフィルター交換、という意味ですね。
一方で、昔からバイクメンテナンスの定説として言われているのは「オイル交換2回につき1回」です。
どちらが正しいかですが、これはオイル交換の頻度によります。もしメーカー推奨通り6,000kmごとにオイル交換するなら、その間(12,000km)フィルター無交換で大丈夫か?というと、ちょっと不安が残ります。
もし、この記事でおすすめしているように3,000km〜5,000kmで早めにオイル交換をするのであれば、その2回に1回(=6,000km〜10,000kmごと)にフィルターを交換するのが、エンジンをクリーンに保つ上で最も合理的で安心かなと私は思います。
もちろん、毎回交換しても全く問題ありません。特にオイルの銘柄をガラッと変える時(例えば鉱物油から化学合成油へ、など)は、古いオイルの成分をリセットする意味でも、フィルターも一緒に交換するのがベストですよ。
自分でやるZ900RSオイル交換
ここからは、自分でZ900RSのオイル交換にチャレンジしたい人向けに、具体的な手順や必要なものを解説します。しっかり準備すれば、作業自体は難しくありませんよ!
オイル交換セットと必要工具

まずは道具を揃えましょう。一度揃えればずっと使えます。特にトルクレンチはケチらず、信頼できるものを選んでくださいね。
| 必要なもの | 主な用途・規格 |
|---|---|
| エンジンオイル | 詳細は後述(3.3Lまたは3.8L) |
| オイルフィルター | 交換する場合。純正品番: 16097-0008 など |
| ドレンワッシャー (ガスケット) | M12サイズ。毎回交換する消耗品です。 |
| 廃油処理箱 (ポイパック) | 4.5L以上の容量があると安心。 |
| レンチ (ソケットレンチ) | ドレンボルト用 (17mm) |
| オイルフィルターレンチ | フィルター交換時。純正フィルターは64mmのカップ型が適合。 |
| トルクレンチ | 超重要。締め付けトルクを管理します。 |
| オイルジョッキ | オイル量を測って入れるのに必須。4Lサイズが便利。 |
| じょうご (オイルファンネル) | オイルをこぼさず注ぐため。 |
| パーツクリーナー・ウエス | 汚れた箇所の清掃用。 |
| ニトリル手袋 (軍手) | 手の汚れ・ケガ防止。 |
必須工具と消耗品
最低限、これだけは揃えてください。
- トルクレンチ (最重要): 10〜60Nm程度をカバーできるものが使いやすいです。これが無いDIYはギャンブルです。
- ソケットレンチ (17mm): ドレンボルト用。メガネレンチでも可能ですが、トルクレンチを使う前提ならソケットが必要です。
- オイルジョッキ (4L以上): 正確な量を測るために必須。
- 廃油処理箱 (4.5L以上): Z900RSは最大3.8L抜けるので、4.5Lサイズが安心。
- ドレンワッシャー (M12): 毎回必ず新品に交換します。数百円の部品をケチってオイル漏れしたら元も子もありません。
フィルター交換時に必要な工具
- オイルフィルターレンチ: Z900RSの純正フィルター(品番: 16097-0008)に適合するのは、「内径64mm / 14角」のカップ型レンチです。KTCの「AVSA-064」などが有名ですね。
あると便利な道具
- メンテナンススタンド: 車体を垂直に立てるため。オイルレベルの確認が正確にできます。
- ニトリル手袋: 薄手で作業性が良く、汚れたオイルが皮膚に付くのを防げます。軍手だとオイルが染み込むので、下にニトリル手袋をするのがおすすめです。
デイトナなどから、フィルター、ドレンワッシャー、Oリング類がセットになった「オイル交換パーフェクトセット」という商品も販売されています。Z900RS用(品番: 18061など)を選べば、消耗品を個別に探す手間が省けるので、初心者の方には便利かもしれませんね。
オイルの規定量 (3.8L/3.3L)

ここ、DIYで一番大事なポイントであり、一番間違えやすいポイントです。必ず確認してください。
Z900RS オイル規定量
- オイルフィルター交換時: 3.8 L
- オイルフィルター非交換時: 3.3 L
※なお、サービスマニュアルには「オイル送量: 4.2L」という記載もありますが、これはエンジンをオーバーホール(完全分解)した時に必要な量です。通常のオイル交換では、クランクケース内部などに古いオイルが必ず0.4L〜0.9Lほど残るため、上記の値(3.8L / 3.3L)が交換時の正しい規定量となります。
入れすぎは厳禁!
「ちょっとくらい多くても大丈夫だろう」は絶対にNGです。オイルを規定のアッパーレベル以上に入れすぎると、様々な不調の原因になります。
- クランクシャフトがオイルを叩いてしまい、泡立って潤滑不良を起こす。
- エンジンブレーキが過度に強くなったり、パワーダウンを感じる。
- ブローバイガスと一緒にオイルがエアクリーナーボックスに逆流し、エアフィルターがオイルまみれになる。
- 最悪の場合、ピストンリングを抜けて燃焼室に入り込み(オイル上がり)、白煙を吹く。マフラーの触媒を痛める原因にもなります。
- 油圧が上がりすぎて、オイルシール(各部のパッキン)を破損させ、オイル漏れを引き起こす。
「少なすぎ」は当然焼き付きのリスクがありますが、「入れすぎ」もエンジンに深刻なダメージを与えると覚えておいてください。必ずオイルジョッキで正確に量を測り、最後は点検窓で確認しましょう。
オイル交換のやり方と手順

準備ができたら、いよいよ作業開始です。一つ一つの作業を焦らず、確実に行いましょう。安全第一です!
Step 1: 暖機運転と準備
まず、作業する場所を確保します。必ず水平な地面で行ってください。バイクが傾いていると、オイルが抜けきらなかったり、レベル確認ができません。センタースタンドがないので、サイドスタンドで立てますが、地面が水平かどうかが重要です。
エンジンをかけて、2〜3分アイドリングします。これはオイルを温めて粘度を下げ、オイルパンに溜まったスラッジ(汚れ)などと一緒に抜けやすくするためです。あまり熱々にしすぎると火傷するので、触れないほど熱くする必要はありませんよ。
エンジンの下に、オイルが垂れてもいいように新聞紙やダンボールで養生しておくと安心です。
Step 2: 古いオイルの排出
エンジンを止め、ドレンボルト(車体左下、エンジンの一番低いところにあるボルト)の真下に廃油処理箱をセットします。
17mmのソケットレンチ(またはメガネレンチ)をドレンボルトにしっかりかけ、「反時計回り」に力を込めて緩めます。最初は固い場合がありますが、一気に「グッ」と力を入れるのがコツです。
ボルトが緩んだら、あとは手で回せます。廃油処理箱を押さえつつ、ボルトをゆっくり回していくと、最後のネジ山を抜けた瞬間に熱いオイルが勢いよく飛び出してきます!火傷と、ボルトを廃油の中に落とさないように十分注意してください。手袋(ニトリル手袋推奨)は必須です。
オイルが出なくなっても、数分間はそのまま放置して、しっかり抜ききりましょう。
Step 3: オイルフィルター交換(交換する場合)
オイルが抜けている間に、フィルターも外します。(※フィルター交換しない場合はこのステップは飛ばします)
64mmのカップ型オイルフィルターレンチを古いフィルターにかぶせ、ラチェットレンチで「反時計回り」に緩めます。ここも最初は固いですが、緩めば手で回せます。
フィルターを外す際も、内部に残ったオイルが垂れてきますので、廃油処理箱で受けるか、ウエスを詰めて養生してください。エキパイ(マフラー)にかかると後で焼けて臭いが出るので注意です。
外したら、フィルターの取り付け面(エンジン側)をパーツクリーナーとウエスで綺麗に拭き、古いOリング(ゴムパッキン)が残っていないか必ず確認してください。
Step 4: ドレンボルト・フィルターの取り付け
オイルが抜けきったら、ドレンボルトの取り付け穴周辺もパーツクリーナーとウエスで綺麗に拭き取ります。
ドレンボルトに、必ず新品のM12ドレンワッシャーをセットします。このワッシャーは潰れることで密閉性を保つので、再利用は絶対ダメです。
ドレンボルトを、まずは必ず手で、回らなくなるまで優しく締め込みます。これでネジ山がまっすぐ入っていることを確認します。(いきなり工具を使うと、斜めに入ってネジ山を破壊する「斜め噛み」のリスクがあります)
手で止まったら、いよいよトルクレンチの出番です。トルクを「29Nm」にセットし、カチッ(またはコクッ)と音が鳴るまで締めます。これでドレンボルトは完了です。
新しいオイルフィルターも同様に、まず新しいOリングに新油を薄く塗り、手で回らなくなるまで締め込みます。そこからトルクレンチ(17Nmにセット)でカチッと締めて完了です。
Step 5: 新しいオイルの注入
オイルジョッキに、規定量の新しいオイルを正確に測り入れます。
(例: フィルター交換ありなら3.8L)
ここでコツですが、いきなり3.8L全量を入れるのではなく、まず3.5L〜3.6L程度、少し少なめに入れてみてください。古いオイルが想像以上に残っている場合があり、入れすぎを防ぐためです。
じょうごを使って、エンジン右側のフィラーキャップ(オイル注入口)からゆっくり注ぎます。フィラーキャップをしっかり閉めます。
Step 6: オイルレベルの最終確認
新しいオイルを入れたら、一度エンジンを始動します。1分ほどアイドリングさせて、オイルをエンジン全体と新しいフィルターに循環させます。そしてエンジンを停止します。
そこから2〜3分待ちます。(循環したオイルがオイルパンに落ちてくるのを待つため)
いよいよ最終確認です。Z900RSはサイドスタンドしかないので、車体を垂直に立てる必要があります。メンテナンススタンドを使うのが一番確実ですが、無ければ誰かに支えてもらうか、自分でハンドルとシートを持って一瞬垂直に立てます。
車体が垂直の状態で、エンジン左下の「オイル点検窓」を見ます。オイルレベルが、点検窓にある2本の線(アッパーレベルとロワーレベル)の真ん中〜アッパーレベル寄りにあれば完璧です。
もしロワーレベルに近い場合は、オイルを100mlずつ足して、再度(エンジン始動→停止→待つ→確認)を繰り返して調整します。アッパーレベルは絶対に超えないように慎重に!
最後に、ドレンボルトやフィルター周りからオイル漏れがないか確認して、作業完了です!お疲れ様でした。
ドレンボルトの締め付けトルク

DIYでオイル交換をする上で、手順そのものよりも100倍重要と言っても過言ではないのが、この「締め付けトルクの管理」です。
Z900RSのエンジン(クランクケース)はアルミ製です。アルミは鉄に比べて非常に柔らかいため、ボルトを締めすぎると、ボルト側(鉄)ではなく、エンジン側のネジ山が簡単になめて(潰れて)しまいます。
「手ルクレンチ(手の感覚)」で「これくらいかな?」と締めるのは、本当に危険なギャンブルです。
Z900RS 規定締め付けトルク(厳守!)
- エンジンオイルドレンボルト (17mm): 29 Nm (3.0 kgf・m)
- オイルフィルター (64mm): 17 Nm (1.7 kgf・m)
この数値は、あなたの愛車の心臓部を守るための命綱です。必ずトルクレンチを使って、指定された力で締めてください。
※年式やモデル(例: Z900RS SEなど)によって、万が一数値が異なる可能性もゼロではありません。最終的な確認は、ご自身の愛車のサービスマニュアル、または信頼できる情報源(カワサキ公式サイトなど)で行うことを強く推奨します。
(参考:カワサキモータースジャパン サービスデータ)
「締めすぎ」と「締めなさすぎ」のリスク
- 締めすぎ (オーバートルク)
前述の通り、アルミ製のクランクケース側のネジ山が破損します。こうなると、もうドレンボルトは締まりません。オイル漏れが止まらなくなり、修理には「ヘリサート加工(ネジ山再生)」や、最悪の場合「クランクケース交換」という、数十万円コースの高額修理が必要になります。 - 締めなさすぎ (トルク不足)
走行中のエンジンの振動で、ドレンボルトやフィルターが徐々に緩んできます。最初はオイルが滲む程度ですが、最悪の場合、走行中にドレンボルトが脱落します。エンジンオイルが一気に噴き出し、エンジンは即座に潤滑不良で焼き付きます。さらに、噴き出したオイルがリアタイヤにかかれば、即スリップダウン(転倒)に繋がり、命に関わる大事故になります。
トルクレンチは、DIYメンテナンスの「安全」と「安心」を買うための必須投資だと考えてくださいね。
オイルポンプのエア抜きとは

Z900RSのDIYオイル交換で、もう一つ絶対に知っておかなければならない、少し怖い話があります。それが「オイルポンプのエア噛み」問題です。
オイル交換で古いオイルを抜いた後、新しいオイルを入れてエンジンを始動した際、オイルポンプがうまくオイルを吸い上げず、空気(エア)だけを吸って空回りしてしまう現象です。
オイルポンプがエア噛みを起こすと、当然ですが、エンジン内部にオイルが全く循環しなくなります。油圧警告灯が点灯するはずですが、それに気づかずアイドリングを続けたり、走行してしまうと、エンジンは数分で焼き付いてしまいます。
これはZ900RSの新設計エンジンの、初期型特有の構造的な問題(オイルポンプのクリアランスやオイルパンの形状など)だった可能性が指摘されています。
エア噛みの確認方法(最重要)
このトラブルを防ぐために、オイル交換後は「必ず」以下の確認手順を踏んでください。
- 新しいオイルを規定量入れ、フィラーキャップを閉めます。
- エンジンを始動します。
- 始動したら「即座に」エンジン左下のオイル点検窓を確認してください。
- 正常な場合: 始動と同時に点検窓のオイルレベルが下がる(オイルがポンプに吸い上げられ、循環し始めた証拠)か、オイルが見えなくなります。
- 異常(エア噛み疑い)の場合: エンジンをかけても、点検窓のオイルレベルが全く変わらない(減らない)。
もし「5.」の異常が確認されたら、パニックにならず、すぐにエンジンを停止してください!
もしエア噛みしたら?(対処法)
万が一、エア噛みが疑われる場合の対処法ですが、正直、DIY初心者の方にはリスクが高いです。
プロの対処法として、「エンジンをかけたまま、オイルフィルターをフィルターレンチでゆっくり緩める」というものがあります。フィルターの隙間からオイル(または空気)が「プシュッ」と出て、オイルが滲んできたら、すかさず締める、という方法です。これでポンプのエアが強制的に抜けることがあるようです。
しかし、これはエンジンをかけながら、熱いオイルが飛び散る可能性のある場所を触る、非常に危険な作業です。
エア噛みが疑われたら、無理せずショップへ!
もし点検窓のオイルレベルが変わらない場合、まずはエンジンを止め、数分待ってから再度エンジンをかけてみてください。それでもダメなら、無理にDIYで解決しようとせず、すぐに購入したお店やカワサキプラザに積載車で運んでもらうのが最も安全で確実な対処法です。
「エア噛みしたかもしれない」と伝えれば、プロが適切に対処してくれます。
(インプット情報によると、車体を左右に大きく傾けることでエアが抜けた、という民間療法的な話もあるようですが、確実性はありません)
最近のモデルでは対策されている可能性が高いですが、特に初期型のZ900RSオーナーさんは、オイル交換後のこの確認作業だけは、絶対に忘れないでくださいね。
Z900RSオイル交換まとめ
Z900RSのオイル交換、ポイントをまとめますね。
DIYでチャレンジする上で大事なのは、以下の3点です。
- 規定量(フィルター交換時3.8L / なし3.3L)を厳守!
→ 入れすぎはエンジンに深刻なダメージを与えます。必ずジョッキで測り、点検窓で確認! - トルク管理(ドレン29Nm / フィルター17Nm)は絶対!
→ トルクレンチを使い、締めすぎ・締めなさすぎを防ぎましょう。 - 交換後は「エア噛み」確認!
→ エンジン始動後、すぐに点検窓のオイルレベルが下がるか確認!
メーカー推奨の交換時期は「6,000kmまたは1年」ですが、日本の乗り方(街乗り、高温多湿)を考えると、愛車を大事にするなら「3,000km〜5,000km、または半年に一度」の交換が、コンディション維持のためにはおすすめです。
自分でメンテナンスをすると、確かにリスクは伴いますが、それ以上に愛車への理解も愛着も深まります。この記事を参考に、ぜひ安全に気をつけてチャレンジしてみてくださいね!